香港子会社を清算する際に、株主である日本親会社側で子会社に対する債権放棄や子会社の株式消滅損が損金になるのかどうかについてよく聞かれますので、その点をご説明します。
以下は日本法人が100%株式を保有している香港子会社が清算を予定しているケースを想定しています。
債権放棄や清算費用が損金になるか
香港子会社の清算を進める際には日本親会社の持つ子会社に対する債権を放棄したり、子会社清算のため会計事務所へ支払う手数料等を親会社が負担することがありますが、これらの費用が日本親会社で損金になるのでしょうか。
上記の清算にかかる費用が寄付金と取り扱われた場合は損金になりません。
ただし、これらの清算にかかる費用を親会社が負担しなければ、今後より大きな損失を被ることになるため、やむをえず当該費用を負担することになったという状況であれば、当該費用は寄付金には該当せず損金として処理できます (法人税基本通達 9-4-1)。
株式評価損、株式消滅損は損金になるか
法人税法によると完全支配関係がある子会社が清算中または清算予定であれば、その子会社の株式評価損については損金の額に算入されない (法人税法 第33条5項、法人税法施行令 第68条の3) とあります。
しかし、これは内国法人間での完全支配関係を前提としていますので、外国子会社の場合は適用されません。つまり清算中または清算予定の外国子会社の株式評価損、株式消滅損は損金計上可能です。
清算より前の段階で株式評価損を計上
株式評価損を損金計上するには要件があります。
有価証券を発行する法人 (このケースでは香港子会社) の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下した場合に評価損を計上できます (法人税法施行令 第68条二ロ)。
資産が状態が著しく悪化したかどうかは下記に基づいて判定します (法人税基本通達 9-1-9)。
(1) 次に掲げる事実が生じた場合
イ 特別清算開始の命令があったこと。
ロ 破産手続開始の決定があったこと。
ハ 再生手続開始の決定があったこと。
ニ 更生手続開始の決定があったこと。
(2) 発行法人の1株当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下落していること
そして(2)については近い将来その価額の回復の見込みがないものになります (法人税基本通達 9-1-7)
株式消滅損の計上のタイミング
株式消滅損は、清算完了時点で損金計上できます。
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