日本本社が香港子会社からキャッシュを回収する方法について検討してみましょう。
日本本社が香港子会社からロイヤルティーを受け取るのと、配当を受け取るのはどちらが良いのでしょうか。
(注)ロイヤルティーは特許や商標等の使用料ですので、配当とどちらか有利な方を選ぶというのはおかしな設定ですが、グループ全体の税金の考え方としてご説明します。
配当でキャッシュを回収したほうがグループ全体としては有利
簡単な例で数値を使って考えてみましょう。
前提条件
香港法人は日本本社の100%子会社
香港子会社、日本本社ともに課税所得があり、繰越欠損金はない。
日本本社の実行税率は30%
香港の税率は2,000,000香港ドルまでは8.25%
貨幣の単位は全て香港ドル表示
<ロイヤルティーで回収>
香港法人の経費はロイヤルティーのみ
ロイヤルティーの金額 は200,000香港ドル
日本法人の収入はロイヤルティーのみ
日本法人の経費はゼロ
グループ全体(連結)の税額は208,500香港ドルになりました。
(注)香港でロイヤルティーを支払う際に源泉税9,900香港ドル(200,000*4.95%)が発生しますが、同額の外国税額控除を取るということでここでは計算に入れていません。
<配当で回収>
配当の金額 はロイヤルティーと同額の200,000香港ドル
香港法人の経費はゼロ
日本法人の収入は配当のみ
日本法人の経費はゼロ
日本法人は海外子会社益金不算入制度で配当の95%は益金不算入
グループ全体(連結)の税額は168,000香港ドルになりました。税金が40,500香港ドル減少しました。お分かりのようにこの減少分は香港と日本の税率の差によるものです。
この例からわかるように、同じ金額を回収するのであれば香港法人の経費項目で回収するのではなく、配当で回収した方がグループ全体の税額という観点からは有利になります。
ただし、税金を抑えることを目的として日本側の利益を税率の低い香港に移すために考えた施策は往々にして移転価格税制等に反する可能性がありますので、専門家に相談してよく検討する必要があります。
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