香港では個人の所得税は各自が申告を行い納税します。日本のように会社が給与から税金を源泉徴収して納税するシステムではありません。香港の給与所得税申告の流れを見てみましょう。
給与所得税 (Salaries Tax)は納税まで下記のような流れになります。
課税期間 (税金の計算期間) は4月1日から翌3月31日です。
1. 雇用主支払報酬報告書の提出
2. 税務申告書の提出
3. 課税通知書の受領
4. 納税
1. 雇用主支払報酬報告書 / BIR56A, IR56B
雇用主支払報酬報告書 (BIR56AとIR56B) は英語でEmployer's returnと言います。雇用主が従業員等に支払った報酬、給与、賞与等を税務当局に報告する申告書になります。毎年4月初旬に雇用主に送られてきます。雇用主は原則、発行日から1ヶ月以内に各従業員に支払った給与金額を記載して税務当局に提出します。
IR56Bには従業員への給与等の支払額が記載されており雇用主は税務当局に提出後、コピーを各従業員に渡します。
2. 給与所得税申告書 / BIR60
給与所得税申告書 (BIR60) は毎年5月初旬に送られてきます。従業員は雇用主から受け取ったIR56Bを参考にしてBIR60を記載し、原則発行日から1ヶ月以内に税務当局に提出します。
駐在員の場合、日本でも手当を受け取っている場合が多いかと思います。日本で受領している手当も香港法人への役務提供の対価であれば、香港で申告する必要があります。
3. 課税通知書 / Tax Assessment
税額が確定し税務当局から課税通知書が送られてきます。
香港では翌年分の税金を予定納税します。そのため、香港に来て初めて納税する人は2年分の税金 (確定分と翌年分) を払うことになります。逆に香港から日本に帰る時には予定納税分が戻ってきます(帰る時期にもよりますが)。
4. 納税
税金の支払は2回に分けて行います。1回目に支払税額の75%を、2回目に残りの25%を払います。通常1月に1回目の支払い、4月に2回目の支払いを行います。
納税までのスケジュールは、通常はこの表のような感じです。課税通知書の発行の時期は8月より早かったり遅かったりすることもあります。
1回目の税金の支払が遅れると2回目に支払う予定だった分もすぐに支払うことになります。また5%のペナルティも課されます。
支払期日から6ヶ月経過すると10%のペナルティになります (未払分+5%のぺナルティの合計に対して10%)。
2021/22の申告期日
2021/22の税務申告期日は下記になります。
雇用主支払報酬報告書の提出期日 2022/6/1
給与所得税申告書の発行 2022/6/1
給与所得税申告書の提出期日 2022/7/2
IRDのウェブサイトで確認できます。
税額の計算例
簡単な例で税金を計算してみます。以下の計算で使用している控除額、税率は2021/22 (2021年4月1日から2022年3月31日の課税年度) の数字です。
ケンシロウさんは既婚者です。配偶者は収入はありません。子供は一人で学生です。
ケンシロウさんの給与等はこの表の通りです。
会社は家賃も負担していますので給与・ボーナスと合わせると900,000の支払になります。
ただし、会社が家賃を負担している場合は、給与・ボーナスの合計額の10%がみなし家賃としてケンシロウさんの収入になります。
つまり、660,000がケンシロウさんの収入の合計です。
収入から控除額の合計を差し引いて課税所得の金額となります。ケンシロウさんの課税所得は258,000香港ドルでした。
税額は累進税率での計算結果と、課税所得に15%を乗じて計算した結果を比較して小さい金額が税額となります。どんなに所得が多くても税率は最大で15%です。
ケンシロウさんの場合は累進税率で計算した25,860香港ドルの方が小さい金額でした。
この金額から減税分 (2021/22は100%の減税、最大10,000香港ドルまで) を差し引きます。
結果、最終的な税額は15,860香港ドルとなりました。
(注) 最大10,000香港ドルまでの100%の減税は予算案で提案されたものでこれから立法プロセスを経て実施可能となります。
税率、控除額についてはIRDが公表している以下のテーブルを参照ください。
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